(2016年3月19日公開動画より)
『つるピカハゲ丸』でおなじみ
のむらしんぼさんの最新作
『コロコロ創刊伝説』が面白い。
漫画家の人生のリアルが描かれてる。
クリエイター必見。

よくあるこういう漫画家漫画で
例えば『バクマン』とかだと
ちょっと綺麗事が入ってる。

漫画家を目指す青年たちが
少年ジャンプの世界で揉まれて
夢を追いかけて成功するような話。

それに比べて『コロコロ創刊伝説』は
しんぼさんが『とどろけ!一番』と
『つるピカハゲ丸』で億単位の
大儲けをして、そこで調子こいて
キャバクラとか行きまくって散財して。

…で、結婚して、その後の転落人生が
思いっきり描かれてる。

帯に書かれたメッセージも生々しい。

離婚や借金など現在のピンチを
乗り越えられるか!?

すべてこの本の売れ行きに
かかっている!

って。これはヤバい。

全てのクリエイターに読んでほしい。
しんぼさんの現在の借金額とかまで
漫画に描かれてる。

『つるピカハゲ丸』といえば
アニメ化もされて大ヒットした作品。
ぼくたちの世代の憧れの存在。

その作者が今こうして借金して
汚い狭い家に住んで、ジリ貧の状況に
なってるというのを見て。夢が無い。

でもその夢が無い中で
この作品を描いたしんぼさんを
ぼくは本当に尊敬している。

ずっとこういう作品を
描いて欲しかった。

しんぼさんは児童漫画に
すごく強いこだわりがあったんで、
こういう作品がなかなか出なかった。

この漫画に出てくるような熱い話は
よく聞いてた。しんぼさんと喫茶店で
面と向かって2人で話したり。

その話をこうやって漫画として
世に出したのは初めてのこと。

離婚した妻に言われた衝撃の言葉や、
コロコロコミックが誕生した時からの
伝説を振り返るストーリーも進めつつ、

今現在のしんぼさんが債務整理の
相談のために担当さんと一緒に
弁護士のところに行った話とかも
出てくる。生々しい。

これこそリアル。
まさにコロコロ創刊伝説。

この担当さんの熱意がいいなと思った。
しんぼさんにこの作品を描かせた熱意。

優秀な編集者だと思う。
しんぼさんの創作意欲を刺激して
今までにない熱い漫画を描かせて。

細かいところまでケアして。
ある意味マネージャーみたいな
ことまでやってる。
テレビ出る時についていったり。

この担当さんはいつも新年会で
泥酔して漫画家に絡みまくって
先輩の編集者からぶん殴られたり
してるところしか見たことが
無かったんで、見直しちゃった。


この漫画と対を成すような
もう1つのオススメ漫画を見つけた。
巻来功士さんの『連載終了!』

巻来功士さんは
少年ジャンプの黄金世代の人。
600万部出てた頃に連載してた。

『グリーンアイズ』とか
『ゴッドサイダー』を描いてた。

この人が めちゃくちゃ生々しい
少年ジャンプ黄金期の裏話を
全部描いてる。

自分がどんな立場にあって
どういう風に漫画を描いてたかとか

嫌いな編集者に担当されることに
なって、その編集者の顔が怖くて
やる気が全部失せた話とか。

それですごいのが、
のむらしんぼさんと巻来功士さんは
同じ時期に活動をしている。

一方は『コロコロコミック』で
一方は『少年ジャンプ』

で、この2人が漫画の中で
同じエピソードを描いてる。

同じ瞬間に2人が立ち合ってて、
そこが2人の漫画家の人生の
ターニングポイントにもなってる。

ぼくは性格的には巻来功士さん
の方に感情移入してしまう。

巻来さんは元々は別の漫画誌で
デビューしてから少年ジャンプに
来たんで「俺は外様だ」って
思いながらやってた。
ジャンプ作家の輪にも入れないし
1人でやりたいから編集者の話も
聞き入れないようにして。

逆に、しんぼさんは
コロコロファミリーって言って
コロコロの仲間みんなで
一生懸命漫画を描くぞーって。

どっちも好きなんだけど
絶対これ両方読むべき。

さらに良いのが、
この『連載終了!』は
全部が書き下ろしということ。
これはすごい。

最後のページに
当時の少年ジャンプ編集長の
堀江さんと巻来さんの対談も
載ってて、これがまた面白い。

この対談の中に出てくる言葉で、
『横糸』と『縦糸』の話が
すごくよくわかった。

『縦糸』っていうのは、
ストーリーの軸になる
長いスパンで見た時の
ストーリーの流れ。

『横糸』っていうのは
1シーン1シーンの見せ方。

カメラの位置がどこにあって、
このキャラに何を言わせて、
ページのめくりでどうやって
読者にインパクトを与えるかとか
そういうのは横糸。
細かい部分での演出。

巻来さんは横糸の方がうまくできず
ストーリーを重視したいがために
物語をなぞるように漫画を描いた。

例えば、週刊連載だと来週への
「引き」とかがすごく大事だけど、
そういうのをあまり意識せずに
描いちゃったから人気がイマイチに。

そういうのを編集者が
指摘できてればもっと売れる漫画を
描けたはずだけど、

あの頃は編集者も未熟だったから
横糸の指摘ができず、
巻来さん1人に任せちゃえ
という決断で担当者もどんどん
変わっていってしまった。

うまくやれていれば
鳥山明、北条司、原哲夫とかに
並ぶ存在になれた可能性もあったのに
そこは残念だった…みたいな話。

とはいえ、当時の少年ジャンプで
連載するだけでも十分すごいと
ぼくは思っちゃうけど。

あとは『連載終了!』の漫画には
荒木飛呂彦さんとかも出てくる。

荒木飛呂彦さんが原哲夫さんの
仕事場に『北斗の拳』連載スタートの
時にアシスタントで入ってた話とか。

北条司さんが自分と同じ大学の
少し上の学年で、先にスターに
なっちゃったからそれが悔しくて
妬んで妬んで妬みまくって
自分も大学を辞めて東京に行った
っていう話とか。

ぼくがドンピシャ世代だから
そういうのがほんとに面白い。

というわけで『コロコロ創刊伝説』と
『連載終了!』の2冊を合わせて
読むことで、ぼくたちが読者だった
あの頃の漫画界の事情が
生々しく浮かび上がってきて
すごく面白いんで、超オススメ!

(文字起こし協力:視聴者Bさん)